ハードコンタクトの歴史
ハードコンタクトはコンタクトレンズの中で一番最初にできたコンタクトです。最初はガラス製で加工が困難だったこともあり普及には至りませんでした。
1940年代に入りポリメチルメタクリレート(PMMA)を素材とするハードコンタクトが開発されました。加工が容易だったため一般に普及していきました。
しかし普及するにつれていろいろな問題点も出てきました。ハードコンタクトは黒目より小さくプラスチック製で水分を一切含みませんので慣れるまでにまず時間がかかります。中には異物感のためドロップアウトしてしまう方がいらっしゃいます。当初のハードは素材自体が酸素を通さないこともあり長時間の装用ができず、無理に装用してしまうと酸素不足により角膜に障害が発生することもありました。
そこでハードコンタクトなのに酸素を透過する素材が開発され、現在はシリコンとフッ素共重合体の素材が主流となっています。それが酸素透過性ハードコンタクト:いわゆるO2レンズと言うレンズです。現在は、フッ素共重合素材の高い酸素透過性により、医師の指導のもと、最長1ヶ月連続装用(寝ている時にも装用できること)できるレンズも販売されています。
種類も通常の近視や遠視を矯正するハードコンタクトのほかにも、強度の乱視の方用の乱視用ハードコンタクトや、円錐角膜の方に対応する円錐角膜用ハードコンタクト、老眼で不自由をしている方用の遠近両用ハードコンタクト迄様々な種類のハードコンタクトがあります。
ハードコンタクトにはレンズの性質上、一長一短があります。
ハードコンタクトの長所
★手入れが簡単です。素材が水分を含んでいないために汚れが付きにくいのです。
★だから寿命も長いです。酸素透過性ハードコンタクトでおおよそ1.5~3年(個人差あり)と言われています。今は既に販売を終えていますが、酸素を通さない一昔前のハードコンタクトは4年~5年と言われていました。中には10年同じコンタクトを無くさず使い続けていたと言う人もいたくらいです。
★乱視の矯正が可能です。乱視の根本原因は角膜のゆがみと言われています。裏を返せば均一な丸い状態であれば乱視がないということになります。ハードコンタクトは固い素材でできていますので、多少歪んでいる角膜上にのせてもハードコンタクトの均一な丸い形状は維持されますので、乱視が矯正できるわけです。個人差はあるものの、かなりクリアな視界を得ることができます。
★円錐角膜、不正乱視と言った特殊な乱視(メガネやソフトコンタクト、乱視用ソフトコンタクトでも矯正が困難)でも矯正が可能です。
ハードコンタクトの短所
★異物感が強く、慣れるまでには個人差はありますが、おおよそ2週間~1ヶ月程でなれる人が多いかと思います。ただしどんなになれても異物感が消える訳ではありません。気にならなくなると言った方がいいかもしれませんね。
★ハードコンタクトはレンズの直径が8.8mm前後と黒目よりも小さく、黒目の上を瞬きと同時に動くようにできているため、ちょっとした視線の移動や衝撃が加わるとズレたり外れたりすることがあります。もちろん「ズレやすい、はずれやすい」ということではありません。ソフトコンタクトと比較するとそういう可能性があると言うことです。もし「ズレやすい、はずれやすい」と言うことであれば、これだけ多くの人から支持されることはありません。現に個人的に私も10数年の装用経験がありますが、ほとんどそういうことはありませんでした。
★上述したようにハードコンタクトは黒目よりも小さく、動きますのでソフトコンタクトと比較するとゴミが入ることがあります。ただしその場合、かなりの痛みがあります。ただ多くの場合涙が出てきて、ゴミは流されるケースが多いのですが、取れない場合ははずして洗浄するしかありません。短所のようでもありますが、その痛みのお陰で我慢して装用することができないため、症状が重篤になるケースは非常に少ないです。ソフトコンタクトの場合、我慢して装用を続け、結果として重篤な眼障害に陥ると言うことが少なからず発生しています。
以上簡単ではありますが、ハードコンタクトの長所と短所をご紹介しました。ソフトコンタクトにも同様に長所と短所があります。今、多くの人が「異物感」を理由にソフトコンタクトへ移行、あるいは当初から使い捨てコンタクトを含むソフトコンタクトを選択する人が多いようです。
しかしモノの見え方、長時間装用時の目への安全性、年間の維持費などハードコンタクトの方が優れている点も多々あります。今一度自分の目にはどちらが向いているのかを再確認して頂ければと思います。